LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
慈悲の心なのだろうか

タイの線路もゴミだらけになっている。

ヴィンセントからすれば、ゴミが出たら線路に撒けばいいという理論だろう。

<慈悲の心があれば、人の仕事を奪うことなんてできない>とも言った。

果たしてそれは、慈悲の心なのだろうか。

 

何も考えぬまま電車に乗り込むとそこは1等車両だった。

俺のチケットは2等車両。

シンさんとナタリーの待つ、2等車両まで移動しなくてはならない。

ここでヴィンセントに<いい旅を>と、別れを告げる。

 

あの島のバンガローでシンさんに渡された本、“いい旅を、と誰もが言った”を思い出す。

本の影響なのか、すっかり<いい旅を>という挨拶が身についたようだ。

 

清潔とはとてもいいがたい古びた列車。

車両とそこに乗る人々を観察しながら、狭い通路を何車両も通り抜けていく。

 

続く

前回の話/パリへ行ったことがあるか?

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。