LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
すべての道はローマに続いてる

シンさんは日本へ帰るつもりなんだ。

それを早くナタリーに伝えてあげなければ。

と思った矢先にシンさんが言った。

 

「近くまで来てるから、ちょっとだけ寄っていこうと思ってる」

帰るのではなく、寄る。

「近くまでっていうけど、カンボジアから日本は結構ある」と俺は返した。

 

「カンボジアからベトナムに入って、ベトナムから中国へ。中国から韓国に入って、釜山から福岡にフネで渡る」

「ずっと陸路で?」俺は聞き返した。

「ああ、そうだ」

「行けるの?」

「すべての道はローマに続いてる。それなら日本へも続いてるはずだ」

 

長い旅になりそうだが、すごく面白そうなプランだ。

そのプランにすぐ食いついたのは、俺ではなくナタリーだった。

「私もそのトリップについて行く。行くに決まってるじゃない!」

<俺もついて行くに決まってる>と言いたいところだが、俺の選ぶルートはそれじゃない。

 

続く

前回の話/避けては通れない

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。