キング アーサーのここだけの話
俺はナイーブな日本人
シンさん、また誕生日がきたね。
今年はいままでになく、最悪の1年だったね。
それでもシンさんは、最悪の1年だったなんて思わず、特別な1年だったと表現するんだろうね。
とにかく、誕生日おめでとう。
話を、続きに戻すよ。
俺は、シンさんがわずかながら躊躇っているのを感じていた。
いまの時代なら、なんの躊躇もせず言える言葉だ。
あの時代でも、本来のシンさんなら気にすることはなかっただろう。
それが俺という、ごく普通のナイーブな日本人。
子供のような大人だからこそ、言葉を選んだ。
言葉を選びながらシンさんは繰り返し言った。
「アーサー、知ってるとは思うけどな」
それがじれったかった。
「シンさん、知ってるよ」
俺の勘は当たっているだろうか。
「そうか。じゃあ、よかった」
シンさん・・・。
それじゃあ、なんの答えにもなっていないよ。
シンさんは、何を言いたかったんだ。
あの瞬間は、何を知る余地もなかったのだ。
続く
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