LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
俺はナイーブな日本人

シンさん、また誕生日がきたね。

今年はいままでになく、最悪の1年だったね。

それでもシンさんは、最悪の1年だったなんて思わず、特別な1年だったと表現するんだろうね。

とにかく、誕生日おめでとう。

話を、続きに戻すよ。

 

俺は、シンさんがわずかながら躊躇っているのを感じていた。

いまの時代なら、なんの躊躇もせず言える言葉だ。

あの時代でも、本来のシンさんなら気にすることはなかっただろう。

それが俺という、ごく普通のナイーブな日本人。

子供のような大人だからこそ、言葉を選んだ。

 

言葉を選びながらシンさんは繰り返し言った。

「アーサー、知ってるとは思うけどな」

それがじれったかった。

「シンさん、知ってるよ」

俺の勘は当たっているだろうか。

「そうか。じゃあ、よかった」

 

シンさん・・・。

それじゃあ、なんの答えにもなっていないよ。

シンさんは、何を言いたかったんだ。

あの瞬間は、何を知る余地もなかったのだ。

 

続く

前回の話/ああいうんが、本当の好みか?

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。