LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
これじゃ、釈迦に説法だ

俺の人生を左右することだ。

本来は、俺がきちんと話すべきだろう。

だが、俺にはそれを英語で完璧に伝える能力がない。

「それを僕が言ったら、僕が口説いてるみたいな感じやなあ」シンさんが言った。

 

そんなタイミングでナタリーが席へと戻ってきて、話に割って入ってきた。

「なにか問題でも」

「バンコクで口説きたい女性がいる。その通訳をお願いしていたところだ」俺は返した。

「そんな大事なことは、自分の言葉で言いなさいよ」

まったくナタリーの言う通りだ。

 

俺とシンさんは目を見合わせ、ふたりして両肩をあげた。

「でも英語で思いのすべてを伝えられる自信ないし、たとえ俺が台本でも用意して完璧に言えたとしても、彼女が英語を完璧に理解しているとは限らない」

「だったらシンが通訳しても、結果は同じじゃない」

俺の反論をナタリーは簡単に論破してみせた。

これじゃ、釈迦に説法だ。

 

 

前回の話/俺を好いてくれる可能性

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。