キング アーサーのここだけの話
洗濯物の乾きがよさそうだよね
東京の下町に張り巡らされた都電でもこんなところは通らない。
バンコクへ近づくと、列車は民家から飛び出した洗濯物をこするほど近くを通り抜けていく。
無論、列車が幅寄せしているのではない。
列車の通るところは一定で、家との距離が詰まることはない。
その日によって量や干す位置が変わる洗濯物が空中支配域を広げているのだ。
列車に近づけることにより、通過の際に巻き起こる風で洗濯物が早く乾くという理論なのだろうか。
はじめて見る風景に囚われようと思えば、いとも簡単なこと。
3人が会話を交わさないことは不自然ではない。
だがこのまま気まずい雰囲気で終わるのは、俺には耐え難い。
「天気がいいから、洗濯物の乾きがよさそうだよね」俺はそういってナタリーへ近づいていった。
前回の話/気まずい雰囲気での解散
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