キング アーサーのここだけの話
早く着くことに意味はない
拗ねているだけかもしれないけど、それでも自立しているナタリーの方がずっとマシだ。
俺はこの先、ひとりで旅をすることができるのだろうか。
できないことがわかっているからこそ、バンコクでまた相棒を捕まえようとしているだけではないのか。
新たなる相棒となる相手のことをほとんどなにも知らないというのに、俺は自分の未来と、彼女の未来を一緒に重ね合わせている。
都市部に入ってから、列車のスピードは極度に落ちている。
歩くよりちょっとだけ速い速度で進む列車。
線路脇を走るトゥクトゥクに次々抜かされている。
ひと駅前でトゥクトゥクに乗り換えた方が、確実に早くバンコクにたどり着いたはずだ。
仮に早くついたとして、俺の気持ちが定まっていないのだから、それはなんの意味も持たないことだ。
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