LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
100ドルを賭けたビリヤード

青い瞳のニコールの肩を抱いた男は、もう一方の手でギネスビールのたっぷり入ったグラスを持ち、店内に1台だけあるビリヤードテーブルに向かって歩いていった。

たくさんのギャラリーに囲まれたその中心では、賭けナインボールが行われていた。

 

賭けナインボールに挑戦するには、100ドル札をビリヤードテーブルに置けばゲームをスタートできる。

それで勝った方が、札をすべてもらうことができるという単純なルール。

 

勝者はテーブルをキープできる権利を持つ。

さらに賞金を増やしたかったらそれまでの掛け金をそのままテーブルに残し、新たなる挑戦を受けることになる。

もちろん1プレイで勝ち逃げしてもいい。

大概の勝者は2〜3回勝つとゲームを離脱し、小さな賞金に頬を緩める。

次は両者ともに挑戦者となり、100ドルずつ掛け金を積んで新たなるゲームのスタートとなるのだ。

 

ニコールと一緒にいる男が挑戦したときは運がいいのか、それとも相手が強い証なのか、掛け金はすでに10数枚ほど積まれているタイミングだった。

男は胸に下げたパスポートケースから100ドル札を取り出すと、テーブルの隅で束になっている札の上に重ねた。

 

続く

次回の話/なんとも言えぬ劣等感

前回の話/単なる尾行か、ストーカーか

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。