キング アーサーのここだけの話
100ドルを賭けたビリヤード
青い瞳のニコールの肩を抱いた男は、もう一方の手でギネスビールのたっぷり入ったグラスを持ち、店内に1台だけあるビリヤードテーブルに向かって歩いていった。
たくさんのギャラリーに囲まれたその中心では、賭けナインボールが行われていた。
賭けナインボールに挑戦するには、100ドル札をビリヤードテーブルに置けばゲームをスタートできる。
それで勝った方が、札をすべてもらうことができるという単純なルール。
勝者はテーブルをキープできる権利を持つ。
さらに賞金を増やしたかったらそれまでの掛け金をそのままテーブルに残し、新たなる挑戦を受けることになる。
もちろん1プレイで勝ち逃げしてもいい。
大概の勝者は2〜3回勝つとゲームを離脱し、小さな賞金に頬を緩める。
次は両者ともに挑戦者となり、100ドルずつ掛け金を積んで新たなるゲームのスタートとなるのだ。
ニコールと一緒にいる男が挑戦したときは運がいいのか、それとも相手が強い証なのか、掛け金はすでに10数枚ほど積まれているタイミングだった。
男は胸に下げたパスポートケースから100ドル札を取り出すと、テーブルの隅で束になっている札の上に重ねた。
続く