キング アーサーのここだけの話
なんとも言えぬ劣等感
ゲームは挑戦者からのスタートとなる。
男はさほど強くないブレイクショットを打ったが、運よく1つの球がポケットへと転がり落ちた。
ブレイクショット以降は強弱をつけた的確なショットが続き、これまでの勝者だった相手にワンショットも打たせることなくナインボールをポケットに収めた。
たった数分ほどで、1000ドルを超える大金を手にしたのだった。
ニコールは飛び跳ねて喜び、まわりを気にすることなく日本人ぽいあの男と唇を重ねた。
俺はそのときなんとも言えぬ劣等感を味わった。
俺は医学部の大学院生だ。
頭がいいという自負が少なからずあった。
容姿だって、並み以下だと思ったことはない。
身長は187センチ。ここに集まる欧米人の中にいては並みの存在だが、日本人にしては高い部類だ。
どこに劣等感を覚える必要があるだろうか。
続く