LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
なんとも言えぬ劣等感

ゲームは挑戦者からのスタートとなる。

男はさほど強くないブレイクショットを打ったが、運よく1つの球がポケットへと転がり落ちた。

ブレイクショット以降は強弱をつけた的確なショットが続き、これまでの勝者だった相手にワンショットも打たせることなくナインボールをポケットに収めた。

たった数分ほどで、1000ドルを超える大金を手にしたのだった。

ニコールは飛び跳ねて喜び、まわりを気にすることなく日本人ぽいあの男と唇を重ねた。

俺はそのときなんとも言えぬ劣等感を味わった。

 

俺は医学部の大学院生だ。

頭がいいという自負が少なからずあった。

容姿だって、並み以下だと思ったことはない。

身長は187センチ。ここに集まる欧米人の中にいては並みの存在だが、日本人にしては高い部類だ。

どこに劣等感を覚える必要があるだろうか。

 

続く

次回の話/ギャンブルの神はいずこへ

前回の話/100ドルを賭けたビリヤード

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。