LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
コンクリートに囲まれた波止場

ボートが着岸した。

ついに3人がそれぞれの岐路に立ったということか。

「ここで1泊していこうよ」俺は2人に向かって提案した。

 

俺、シンさん、ナタリーの順に並び、等間隔に離れているがその声は一番後ろにいるナタリーにもはっきりと聞こえたはずだ。

しかし誰からも返事がない。

 

シンさんは声なく後ろに振り返ると2人はしばらく見つめ合い、ナタリーまた声なくうなずいた。

「久しぶりに都会の夜を堪能するのも悪くないな」シンさんはやっと口を開いた。

「まだ午前中なんだから、夜までずいぶん時間がある。いまから飲んでたんじゃ夜まで持たない」俺はこの白けた空気を変えたくて、無理におどけた。

「じゃあ、ビーチに行こう」ナタリーはその空気を読んだのか、昨日まで島の美しい砂浜で2週間も過ごしていたというのに、また俺たちを海へと誘った。

 

俺たちの目と鼻の先には、コンクリートに囲まれた波止場で遊ぶ少女がいる。

ここには、あんなにも美しかったビーチに匹敵する場所なんてあるのだろうか。

 

続く

前回の話/髪引かれる思いなんてあるのか

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。