キング アーサーのここだけの話
法律の外にある楽園
もはやニコールは、ここにいない。
そんな予感があった。でもアタリもせぬ予感のままで終わらせたかった。
だからこそ核心に触れることはできなかった。
「島って、どこの島?」俺はシンさんに尋ねた。
「タイランドの真ん中くらい。マレー半島の東側にあるアウト・オブ・ローな楽園」
「アウト・オブ・ロー?」
「そうや、法律の外にある地球最後の楽園や」
法律の外が意味することはわからなかったが、興味は湧いた。
「行ってみたいけど、タイランドの真ん中にあるんじゃ、けっこう遠いよね?」
「深夜バスでバンコクを出発して、夜明け前にスラータニーからボートで渡って、昼くらいには着いちゃうんやから、時間的には半日。ほいでもほとんど寝てる間に着くから、明日はいきなり島にいるって感覚やな。1泊分の宿泊費も浮かすことができるから、それが島までの交通費みたいなもんや」
「戻りは?」
「いつでもええんちゃう。自分の都合で」
「いつ帰ってくるつもりなの?」
「僕はバンコクには戻ってけえへん。2週間くらい島におって、飽きたらまたほかの場所に行くわ」
「俺、4日後の夜便で日本に帰るから・・・」と答え、頭の中で逆算をはじめた。
明日の昼、島に到着して1泊。
明後日は島を満喫して2泊目。
明々後日の夜に島を出発して、弥の明後日の昼にバンコク到着。
午後に本を買って、その夜にフライト。
バンコクにはもう飽きてきたので、ちょうどいいようにも思えた。
続く