LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
いい旅を、と誰もが言った

ゲートをくぐり抜けると<ボン・ボヤージュ!>と描かれた看板の裏には<ハブ・ア・グッド・ジャーニー>とあった。

 

「来る者も去る者にも“いい旅を!”ってのが、ええやろ」

ここまできて、シンさんとやっと会話らしい会話がはじまった。

確かにポジティブに考えれば、そうも思える。

 

「アーサーは“いい旅を、と誰もが言った”って本を読んだことあるか」

「ないけど。誰の本」

「去年来たときバンガローに置いてったから、運がよければ残ってるかもな」

「誰の本って質問に、答えてないじゃん」

「バンガローに着くまでのお楽しみや」

「1年前の話でしょ。残ってるわけないじゃん!」

「そりゃ、そうやな!」と2人して吹き出して笑った。

 

港町と呼べるのだろうか、桟橋の付け根には数件の集落があり、広場には十台くらいのダットサンのピックアップ・トラックが並んでいた。

トラックのドライバーらしき男たちは下船した客に、「バンガロー、バンガロー」とひとり残らず声をかけていた。

どうやらあのピックアップ・トラックは乗合タクシーの役割を果たしているようで、ドライバーは客たちが目指す宿を聞くと、タクシーの向かう先へと振り分けていた。

 

続く

次回の話/港の小さな集落

前回の話/ボン・ボヤージュ!

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。