LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
港の小さな集落

俺の1歩先を歩くシンさんの元へもドライバーはやってきた。

「アフター・ポストオフィス」とシンさんはひとりめのドライバーをやり過ごした。

しかしそこから先へ進もうとするが、すべてのドライバーから「バンガロー、バンガロー」と声をかけられ、同じ答えを繰り返す。

 

当然、俺にも同じ質問が繰り返されたのだが、俺も「ミー・トゥー」をずっと繰り返した。

やっとの思いでドライバーの人波、鼻づまりのような発音の大声の波をくぐり抜けた。

目の前には小さな集落と、対照的に大きなジャングルが広がっている。

 

「タクシーを避けるために言ったの?」

「ちゃうよ。ホンマに郵便局に用があったんや」

「なんで郵便局に?」

「ペナンから、荷物を送ってたんや」

「なんで、ペナンから」

「ペナンでは、使ってたんや」

「あの子と一緒に?」

俺はようやくニコールのことを切り出せた。

でも核心に近づく前に、郵便局に到着してしまった。

 

「時間かかるかもしれんから、そこらへんで待っててや」

シンさんは扉のない郵便局に入っていき、俺は待ち時間を潰すために小さな集落を物色しはじめた。

 

続く

次回の話/ユダヤ系の女

前回の話/いい旅を、と誰もが言った

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

 

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。