LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
金子光晴って、誰?

とても普通のピックアップ・トラックが走れるとは思えない未舗装の丘を、左右に揺れながら登っていった。

かろうじて1台走れる程度は草木がないジャングルが続いている。

 

安全を担保したアミューズメントパークのアトラクションと違い、この乗り物には何の保証もない。

「だ、大丈夫かな」俺は震えながら、シンさんに声をかけた。

「ドライバーも死にたないから、細心の注意を払ってるもんやで、こういうのって」

 

言われてみれば、確かにそうだ。

だがまわりを気にかけていると、心配事ばかりが頭によぎる。

「そういえば、彼女とはペナンも一緒だったの?」俺はニコールの話の続きを聞くことにした。

 

「そうや。一緒にシンガポールから入ってジョホールバル、マラッカ、スレンバン、クアラルンプールって、少しずつ北上してきたんや」、続けて「金子光晴風に言えば、クアラルンプールはコーランプルか」と言い直した。

「金子光晴って、誰? 友だち?」

「会ったことはないけど、心の通じる友やな」

「心が通じてるのに、会ったこともない?」

「ああ、心が通じてるっていっても一方通行やけどな。僕が金子光晴の詩をはじめて読んだ頃には、もう亡くなっとるから、こっちの気持ちはまったく知らんねん」

「そういうの、友っていうの?」

俺は思わず吹き出してしまった。

 

続く

次回の話/ビーチに建つバンガロー小屋

前回の話/ペールグリーンの紙切れ

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。