キング アーサーのここだけの話
バンガローの交換図書館
バンガローの母屋には大きな本棚があり、シンさんはコークを片手にその前のテーブルを陣取っていた。
「あったで」と言い、シンさんは俺に1冊の本を手渡した。
その本は例の<いい旅を、と誰もが言った>だった。
ここを訪れた旅人たちは読み終えた本をこの本棚に置いていき、かわりにほかの1冊とエクスチェンジできる交換図書館のようなシステムになっている。
「シンさんが1年前に置いてった本なの?」
「そうや」
「よく残ってたね? 人気ない作家なの?」
「アホなこと言うな。片岡義男や」
あとからバンガローのオーナーに尋ねたところ、日本人客はこないので本棚にずっと残っていたとのことだった。
<いい旅を、と誰もが言った>には<彼はいま羊飼い>という章がある。
そしていま、シンさんはこのON THE HILL MAGAZINEで<ヒツジ飼いの冒険>なる小説を綴っている。
このときからシンさんにその構想があったのかわからないが、この本はシンさんに大きな影響を与えていたのだと、いまにして改めて思う。
続く
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