キング アーサーのここだけの話
東屋の木陰で
オーナーはナタリーを空き部屋へと案内した。
俺はほかの部屋がどうなっているのか気になっていた。
特に、ナタリーが泊まるからこそなのかもしれない。
「さてと」シンさんはヒザに手を当て、立ち上がった。
「どこ行くの?」俺はとっさに尋ねた。
「スキンカヤックでも組もうと思って」
絶対にウソだ。
シンさんはナタリーの様子を見に行こうとしてる。
俺はこれ以上遅れを取るまいと立ち上がった。
母屋のバンガローから2件、住人が誰であるかわからぬ小屋があり、そこから先にナタリー、俺、シンさんの小屋という順で海沿いに緩やかなアーチを描いて並んでいた。
2人を追うように歩きはじめたが、シンさんは意外にもナタリーの部屋の部屋を通り過ぎ、一番右端にある自分の小屋に向かっていった。
小屋のさらに右側には小さな東屋があり、そこは壁がなく、屋根にヤシの葉を葺いただけ簡素なものだった。
その先は行き止まりで、マングローブの林が生い茂っていた。
東屋の木陰で、シンさんはスキンカヤックなるものを組み立てはじめた。
大きなボストンバッグから何本ものアルミパイプを取り出し、最後に干しイカのようにペッタンコになった巨大な生地を広げた。
大変に興味はあったのだが、それ以上にナタリーが気になった俺は、スキンカヤックの組み立ての瞬間を見届けず、その場を離れた。
続く
次回の話/私は賭けた
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