キング アーサーのここだけの話
私は賭けた
ナタリーの部屋に行ってみたが、すでに不在となっていた。
部屋代の支払いを済ませるために、レセプションに戻ったのだろう。
安いとはいえ、2週間も泊まるとなると結構な額だ。
俺はシンさんのことを気にも止めず、母屋に向かった。
案の定、ナタリーは清算をしていた。
「アーサーは何日泊まるの?」ナタリーはオーナーから釣銭を受け取りながら、俺に聞いてきた。
実際は2泊の予定。
その支払いもすでに済ませている。
「2週間くらい」俺はオーナーからの熱い視線を避けるようして答えた。
「あら偶然! じゃあ一緒に楽しまなくっちゃね!」とナタリーは声を弾ませた。
「アイ・ベット」オーナーは短く言った。
直訳すると<私は賭けた>となるが、運命を左右するかもしれない俺の虚偽に、<賭けてもいいくらい、確実に成功するよ>という意味が込められていた。
成功すると断言できる根拠はもちろん何もなく、俺の幸運を祈って掛けられた言葉に違いない。
明後日以降の空き部屋は、もうないはずだ。
俺がここで2週間過ごすには、ナタリーの部屋の部屋に潜り込むか、あるいはシンさんの部屋の隅にでも泊まらせてもらうしか方法はない。
続く
次回の話/主人公は俺だ
前回の話/東屋の木陰で
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