キング アーサーのここだけの話
人里離れた場所
その頃のハードリンビーチは、満月でない限り人が来ないようなジャングルの奥にある小さな海岸だった。
だからこそ、人が集まってどんなに大騒ぎしても、誰にも迷惑がかからない。
そんな人里離れた場所だった。
月夜のジャングルは、野生動物たちがやたらと元気で、雄叫びがサラウンドで駆け巡っていた。
そのジャングルの獣道を懐中電灯もなしで、シンさん先頭で進んで行く。
「どんな大型の獣が、あんな雄叫びをあげるのかな」俺はビビりながら尋ねた。
「体長2メートルはあるだろうなあ、なんて応えたら、なおさらビビるだろ」シンさんは即答した。
「うん、ビビるだけじゃなく、引き返す」
「じゃあ、聞かない方がいい」
「ってことは、2メートルあるってこと」
「さあな。でもこの島には大型の獣なんていないことだけは、約束するよ」
「約束してくれるなら、さあな、っていう必要ないだろ」俺は声を張り上げた。
「アーサーの方が、よっぽど獣の雄叫びよ」ナタリーが笑った。
「ナタリーは、どっちの味方なんだよ!」
そんな他愛もない論争を続けながらジャングルの中を歩いていると、満月が海面ギリギリに浮かぶビーチが目の前に突如として現れた。
続く
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