LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
意味もわからずにいる俺

日本人すべてがクレイジーだと思われたくない。

俺の心を包む壁は繊細だったが、ついに本当のことを告白した。

「カットされてなかったかもしれない。俺が覚えてなかっただけだ」

 

ちょび髭の男、ナタリーとシンさんは打ち合わせでもしていたかのように、同時に両肩をあげて笑った。

「それ、俺にも」とちょび髭の男にオーダーした。

「すぐに日本に帰るんなら、やめといた方がいいじゃないか」シンさんは、立てた俺の人差し指を遮った。

「すぐには帰らない」俺は決断を口にした。

 

ちょび髭の男はまたダミ声で言った。

「エスタ・パ〜デル・マノ・プラ・ビ〜ダ・エルマ〜ノ!」

 

セリフを思い出せずにいた俺にナタリーが耳打ちしてくれた。

「シ・プラ・ビーダ!」

やっとのこと言えたセリフだが、相変わらずシーンを理解せず、その意味もわからずにいる俺だった。

 

続く

次回の話/虚栄心も羞恥心もなくなった俺

前回の話/映画を字幕で観ている

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。