キング アーサーのここだけの話
気の利いた冗談なんて言えない
水平線の彼方に消えていくより先に、周囲の暗さでシンさんのことを目で追えなくなっていた。
シンさんの姿が見えなくなると、誰もが目のやり場がなくなった。
頭を抱え込むようにして泣いているナタリーのことは、誰もが気配で感じ取っていたからだった。
こんなとき、シンさんなら気の利いた冗談のひとつでも言っていただろう。
でもその役者が、ここにいない。
俺では荷が重すぎるし、たとえ気の利いた冗談が思い浮かんできたとしても、それを上手に英語にすることができるとは思えない。
「自由って、何よ!」
羽音と入れ替わり、ナタリーの発した言葉が耳鳴りのように続いた。
続く
次回の話/毎度毎度、朝帰りの男
前回の話/自由って、何だろう
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