キング アーサーのここだけの話
この島ではフツーの1日
シンさんが着岸するまでにはしばらくありそうだ。
シンさんがこっちへ戻ってきても、うまく言葉を発せられるかわからない。
ケイトもジュリーも同じように感じているらしく、2人は俺を挟むようにして並び、そして俺の手を引いた。
シンさんと対面したとき、ナタリーは穏やかでいられるだろうか。
いや、ナタリーなら何事もなかったように微笑みかけるだろう。
そんなことを想像していると、このひと晩を知っているだけに痛ましく思える。
俺はケイトとジュリーに手を引かれ、自分たちのバンガローへと戻っていった。
ただ、バンガローへと戻ったからといって気持ちはスッキリせず、寝ようにも寝付けなかった。
それはケイトもジュリーも同じようで、だからといって抱き合う気分にもなれず、ハーブをまわし飲みした。
大きく吸い込んではむせ返り、目尻に涙を溜めてはパイプをまわす。
混沌とした空気の中、やがて無秩序に2人を抱く。
そんなバカげた、でもこの島ではフツーの1日を俺は過ごした。
続く
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