LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
この島ではフツーの1日

シンさんが着岸するまでにはしばらくありそうだ。

シンさんがこっちへ戻ってきても、うまく言葉を発せられるかわからない。

ケイトもジュリーも同じように感じているらしく、2人は俺を挟むようにして並び、そして俺の手を引いた。

 

シンさんと対面したとき、ナタリーは穏やかでいられるだろうか。

いや、ナタリーなら何事もなかったように微笑みかけるだろう。

そんなことを想像していると、このひと晩を知っているだけに痛ましく思える。

 

俺はケイトとジュリーに手を引かれ、自分たちのバンガローへと戻っていった。

ただ、バンガローへと戻ったからといって気持ちはスッキリせず、寝ようにも寝付けなかった。

 

それはケイトもジュリーも同じようで、だからといって抱き合う気分にもなれず、ハーブをまわし飲みした。

大きく吸い込んではむせ返り、目尻に涙を溜めてはパイプをまわす。

混沌とした空気の中、やがて無秩序に2人を抱く。

そんなバカげた、でもこの島ではフツーの1日を俺は過ごした。

 

続く

次回の話/上下が歪むほどの体験

前回の話/意味を持たないVサイン

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。