キング アーサーのここだけの話
旅ですれ違っただけのオンナ
俺はいつの間に寝てしまったのか記憶にない。
ある瞬間からの記憶が飛んでしまっている。
すべてのドラッグを昨夜使い切ったのか、それとも彼女らが持って出ていったのかわからない。
バンガローから、彼女らの痕跡が何もかもが消えている。
荷物がないのだから、彼女たちに戻ってくる意志がないと俺は理解した。
「しょせん旅ですれ違っただけのオンナだ」と自分に言い聞かせた。
これがケイトかジュリーのどちらかひとりと出会い、そのひとりとこの狭い部屋で濃密な時間を過ごしたのなら、ショックは大きかったと思う。
しかし2人の女から同時に愛されたのだから、そもそも夢のような話だ。
彼女たちと過ごした証拠は、何も残っていない。
数枚の写真を撮ったが、この島では現像することなどできない。
もしすぐにでも現像できたなら、俺はそのプリント写真を使って彼女らの目撃情報を求め、島中を歩きまわっただろう。
続く
次回の話/そんな自由は欲しくない
前回の話/オンナごころのわからないヤツ
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