LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
それ以上ないほどの汚い言葉

俺のバックパックひとつしか残っていない部屋。

彼女たちの荷物もないことはナタリーにも十分伝わっただろう。

「どうしよう」ナタリーはまた気弱に狼狽えた。

 

俺は呼吸を整え、精一杯明るく応えた。

「心配するほどのことじゃない。またこれからも、いくつもの出会いがある。次はもっと美女3人同時に付き合ってみせる」

これ以上ないほどの気持ちで、俺は強がってみせた。

 

しかしナタリーからは、それ以上ないほどの汚い言葉で返ってきた。

「ファック」

 

ナタリーの目は狼狽えながらも真剣に怒っていた。

俺はその目を直視できず、バルコニーを見やりながらもう一度繰り返した。

「心配するほどのことじゃない」

バルコニーでは、彼女たちが忘れていった洗濯物が揺れていた。

 

しかしナタリーが発したのは、予想もしていない言葉だった。

「ケイトとジュリーのことなんかじゃないの。シンが大変なの!」

 

続く

次回の話/裏切りでもなんでもない

前回の話/ケイトとジュリー

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

 

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。