キング アーサーのここだけの話
古くから島に伝わる薬
ナタリーを追って店を出る俺を、薬剤師が呼び止めた。
俺に両手で器を作るようジェスチャーすると、棚から古い薬瓶を取り出した。
続けて薬剤師は俺の手のひらめがけ、錠剤を何十錠かこぼした。
「アイランド・ドラッグ」
俺は薬を片手に握り直し、錠剤を見つめたまま無言でいると薬剤師は言った。
「ドン・ウォーリー。ノー・バッド・ドラッグ。クラシカル・ドラッグ」
言いたいことは十分に伝わった。
古くから島に伝わる薬。
飛びを楽しむような方向の薬じゃないってことらしい。
「ドン・ウォーリー。ドン・ウォーリー」と薬剤師は続けて言った。
俺はポケットからサイフを取り出すと、薬剤師は首を横に振った。
「フリー」
お金はいらないということらしい。
ナタリーの放心状態が、よっぽど気になったということだろうか。
俺は薬剤師のマネをするように「ドン・ウォーリー。ドン・ウォーリー」と言って、札を1枚取り出し、お金はきちんと払うという意思表示をした。
現地の言葉でいくらといわれても、数字すら把握できない。
だから薬量に対し、十分と思う金額の札だった。
続く
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