LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
古くから島に伝わる薬

ナタリーを追って店を出る俺を、薬剤師が呼び止めた。

俺に両手で器を作るようジェスチャーすると、棚から古い薬瓶を取り出した。

続けて薬剤師は俺の手のひらめがけ、錠剤を何十錠かこぼした。

「アイランド・ドラッグ」

 

俺は薬を片手に握り直し、錠剤を見つめたまま無言でいると薬剤師は言った。

「ドン・ウォーリー。ノー・バッド・ドラッグ。クラシカル・ドラッグ」

言いたいことは十分に伝わった。

 

古くから島に伝わる薬。

飛びを楽しむような方向の薬じゃないってことらしい。

「ドン・ウォーリー。ドン・ウォーリー」と薬剤師は続けて言った。

 

俺はポケットからサイフを取り出すと、薬剤師は首を横に振った。

「フリー」

お金はいらないということらしい。

ナタリーの放心状態が、よっぽど気になったということだろうか。

 

俺は薬剤師のマネをするように「ドン・ウォーリー。ドン・ウォーリー」と言って、札を1枚取り出し、お金はきちんと払うという意思表示をした。

現地の言葉でいくらといわれても、数字すら把握できない。

だから薬量に対し、十分と思う金額の札だった。

 

続く

次回の話/薬は安全で衛生的なもの

前回の話/崩れ落ちたナタリー

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。