LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
恩着せがましく軟弱者の俺

街で薬を手に入れ、シンさんに飲ませたのが一昨日だとすると、確かに俺は昨日バンガローから1歩も出ていないことになる。

だが俺には、その昨日という記憶がない。

 

「もしかして、昨日はずっと寝てた?」シンさんが俺に尋ねてきた。

「そう言われてみれば、寝てたのかもしれない。すっごく疲れてたから・・・」と応えたところで口を塞いだ。

 

間髪入れず、シンさんは言った。

「僕のために街を往復して、それで疲れたんだな。ありがとう」

 

こんなセリフを言わせたんじゃ、恩着せがましいじゃないか。

しかも、街までのわずかな距離を往復しただけ。

 

これまでに何回も歩いたことあるし、寝ずに看病していたナタリーも同じだけ歩いたのに、彼女は昨日も元気にしてたようだ。

それじゃ軟弱者みたいでもあるし、俺ってまるっきりダサイ。

 

続く

次回の話/ナタリーはなぜ元気なのだ?

前回の話/記憶にない昨日という1日

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。