キング アーサーのここだけの話
ゴミは多いが、クズはいない。
物思いに耽るにしては、あまりにも長すぎる時間。
俺たちはついに、駅で一夜を明かした。
もちろんその待ち時間に耐えきれず駅から去った者も多かったと思うが、ほとんどの外国人旅行者はホームで待っていた。
情報が飛び交わない時代、そこは外にあっても閉ざされた空間。
今たとえるならそうなのだが、当時はそれが当たり前であり、その不便さこそが心地よかった。
なんの情報も得ることはできないが、暇つぶしに何度駅舎へ足を運んだだろうか。
手柄を得ることなくホームに戻り、両手のひらを空に向け、離れたところにいるシンさんにサインを送る。
それだけで満足だった。
これは俺だけがやっていたのではなく、外国人旅行者たちはすべからく同じ行動を取っていた。
来ないものは来ない。わからないものは、わからない。
だからすべて笑って許せた。
時間の経過とともに酔っ払い旅行者も増え、ホームにはさらなるゴミが増加した。
誰も怒り出す者はいなかった。
今ならば列車が来ないこと、駅員が情報を知らないこと、なにかしらの対象物を捕らえ、短時間でキレる者が続出し、駅舎はパニックとなっていただろう。
あの頃、そこらじゅうにゴミは溢れていたが、クズはいなかった。
続く
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