キング アーサーのここだけの話
慈悲の心なのだろうか
タイの線路もゴミだらけになっている。
ヴィンセントからすれば、ゴミが出たら線路に撒けばいいという理論だろう。
<慈悲の心があれば、人の仕事を奪うことなんてできない>とも言った。
果たしてそれは、慈悲の心なのだろうか。
何も考えぬまま電車に乗り込むとそこは1等車両だった。
俺のチケットは2等車両。
シンさんとナタリーの待つ、2等車両まで移動しなくてはならない。
ここでヴィンセントに<いい旅を>と、別れを告げる。
あの島のバンガローでシンさんに渡された本、“いい旅を、と誰もが言った”を思い出す。
本の影響なのか、すっかり<いい旅を>という挨拶が身についたようだ。
清潔とはとてもいいがたい古びた列車。
車両とそこに乗る人々を観察しながら、狭い通路を何車両も通り抜けていく。
続く
前回の話/パリへ行ったことがあるか?
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