LOCAL,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
来る者は拒まず去る者を追わず

1等と2等の違いを俺は見つけた。

シートにクッションがあるか、板張りかの差だ。

だが破れたクッションの1等より、板張りの2等の方が簡素であるからこそ清潔に見える。

そうナタリーに報告した。

「でも、このままバンコクまで1日座っていたら、お尻が硬くなってしまいそう」と彼女は笑った。

「次はクッションを持ってくればいい」とシンさんは言って笑ったが、バックパッカーにとってそんなことのためにクッションを持ち歩くなんてナンセンスだ。

 

持って歩くわけないとはじめから知った上でのシンさんの言葉。

だから俺もナタリーもなんの返事も返さないし、返せない。

 

そこで俺は気づいた。

ふたりと一緒になにかをする約束をしないと誓ったいまの俺だから気づけた。

ナタリーもいつかはシンさんから離れていくのだろう。

 

続く

前回の話/約束をすべきでない

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。