キング アーサーのここだけの話
天然のシャワー
貧困層が2等席を利用しているといっても過言ではないように思えた。
それほど着衣に無頓着というか、また着衣だけでなく、露出している肌もすべて汚れた風体の人ばかりだった。
俺たちは3人で、4座席のボックスシートを確保できていたので、そのエリアに入ってくることはない。
ただし、後ろからも横からも、饐えた香りは漂ってくる。
「気にならないの?」俺は思わずシンさんに聞いた。
「自分から、ああいうニオイを発してることもよくある」と、笑って答えるシンさん。
カヤック旅に出ていると、1〜2週間シャワーも浴びられないことはいくらでもある。
その間に雨でも降れば、天然のシャワーはひとときの安らぎとなるけれど、カヤックを少し漕げばまた頭から汗ビショになる。
そう話してくれた。
2週間もシャワーを浴びられないなんて、俺にはとても耐えられない。
島のバンガローでの2週間。
雨水を溜めただけの冷たくはないが温かくもない日向水シャワー。
下水処理できないのでシャンプーは使えない。
そんな生活さえも、俺にはギリギリだった。
続く
前回の話/空きのある1等席
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