LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
天然のシャワー

貧困層が2等席を利用しているといっても過言ではないように思えた。

それほど着衣に無頓着というか、また着衣だけでなく、露出している肌もすべて汚れた風体の人ばかりだった。

俺たちは3人で、4座席のボックスシートを確保できていたので、そのエリアに入ってくることはない。

ただし、後ろからも横からも、饐えた香りは漂ってくる。

 

「気にならないの?」俺は思わずシンさんに聞いた。

「自分から、ああいうニオイを発してることもよくある」と、笑って答えるシンさん。

カヤック旅に出ていると、1〜2週間シャワーも浴びられないことはいくらでもある。

その間に雨でも降れば、天然のシャワーはひとときの安らぎとなるけれど、カヤックを少し漕げばまた頭から汗ビショになる。

そう話してくれた。

 

2週間もシャワーを浴びられないなんて、俺にはとても耐えられない。

島のバンガローでの2週間。

雨水を溜めただけの冷たくはないが温かくもない日向水シャワー。

下水処理できないのでシャンプーは使えない。

そんな生活さえも、俺にはギリギリだった。

 

続く

前回の話/空きのある1等席

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。