LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
公衆電話にいるナタリー

もうバンコクに到着してもいい時間だというのに、列車は途中の駅で止まっている。

駅名も読めなければ、ホームに流れるアナウンスも何を言っているのかさっぱりわからない。

「列車の故障かな。それとも事故でもあったかな。言葉がわかんないって、本当に困るよね」思いつくことを俺はそのまま口にした。

「まあ停車の原因はそんなとこね」と言ってナタリーは立ち上がった。

「言葉がわからないから面白い」シンさんはナタリーがいなくなった席に滑り込み、2席分確保するようにして横になった。

 

前にもシンさんから聞いたセリフだ。

言葉がわかるとつまらない。

わからないからこそ、相手の表情を読んだり、こっちの意思を一生懸命伝えようとしたりで、付き合いが濃厚になる。

言ってることや先がわかったら、やらなくていい。

わからなからこそ、行く意味、やる価値がある。

 

理解はできるが、全面的に同意できるかといえば、俺は以前よりシンさんよりの考え方になっているがいまだその途中だ。

シンさんから目をそらすようにホームを見ると、ナタリーは公衆電話にいた。

寄り道で帰国が遠のくことを連絡しているのだろう。

 

続く

前回の話/ここが岐路でいまが決断のとき

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。