キング アーサーのここだけの話
これじゃ、釈迦に説法だ
俺の人生を左右することだ。
本来は、俺がきちんと話すべきだろう。
だが、俺にはそれを英語で完璧に伝える能力がない。
「それを僕が言ったら、僕が口説いてるみたいな感じやなあ」シンさんが言った。
そんなタイミングでナタリーが席へと戻ってきて、話に割って入ってきた。
「なにか問題でも」
「バンコクで口説きたい女性がいる。その通訳をお願いしていたところだ」俺は返した。
「そんな大事なことは、自分の言葉で言いなさいよ」
まったくナタリーの言う通りだ。
俺とシンさんは目を見合わせ、ふたりして両肩をあげた。
「でも英語で思いのすべてを伝えられる自信ないし、たとえ俺が台本でも用意して完璧に言えたとしても、彼女が英語を完璧に理解しているとは限らない」
「だったらシンが通訳しても、結果は同じじゃない」
俺の反論をナタリーは簡単に論破してみせた。
これじゃ、釈迦に説法だ。
前回の話/俺を好いてくれる可能性
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