キング アーサーのここだけの話
ブランニューの埃っぽいバッグ
悪辣なことも笑いながらできる。
野上真一はそういう男だ。
「この埃っぽいバッグは、昨日は並んでなかったな」とシンさんは笑顔で店員に話しかけた。
「今日入ったばかりのブランニューだ」
「ブランニューなわりに汚い」と言いながらバッグを汚そうに親指と人差し指の指先でつまみ上げ、目尻にシワを寄せた。
「中身はクリーンだ」店員は怪訝な顔で言い返した。
「ヘイ、クリーナー。中には洗面道具とコンタクトレンズが入ってるな」
俺は、シンさんが<クリーン>という言葉に反応して、店員に<クリーナー>とあだ名をつけたのだと思った。
「ビンゴ! 正解だ。透視できるのか」店員はアゴが外れんばかりに驚いていた。
だが実のところ、シンさんは俺から聞いた内容を伝えただけだ。
それなのに目を細め、いかにも透視したかのような目つきでハッタリをかました。
「そうだ、透視ができるんだ。クリーナーが盗んできた瞬間も透視してた」
続く