LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
今夜からしばらく寝ない

目を覚ましたのは、すでに西日が傾いている時間帯だった。

シンさんのバンガローからはいまだイビキが聞こえてくる。

 

喉の渇きを感じた俺は、母屋のレストランへと足を運んだ。

ドリンクケースは1日中太陽の光を浴びていたので、口に入れなくともドリンクは熱いことが容易に想像できた。

 

温かい炭酸飲料より、甘ったるくも無炭酸のジュースの方が幾分マシだろう。

そう思ってドリンクケースを眺めるが、どれも炭酸入りばかりだ。

これが冷えていたなら、こんなボロ屋でも最高のリゾート地に感じただろう。

 

一番冷たいコーラと念を押してオーダーし、俺は空いていた席に着いた。

間もなく外に出していたため埃だらけになったボトルを、軽く拭っただけのコーラを持ったバンガローのオーナーがやってきた。

ボトルを渡された瞬間にうんざりし、口を聞く気にもならなかった。

 

「ずいぶん早い起床だな」それがオーナーの本心なのかよく伝わらない。

「ほかの人は」

「夜に備えて、まだ寝てる。今夜はフルムーンパーティだ。みんな爆発するぞ」

「そんなにスゴイのか」

「スゴイさ。今夜からしばらく寝ないで遊び続ける奴もいるくらいだ」

 

今夜から寝ないのではなく夜を待たず、すでに緩やかにスタートを切れないものなのか。

俺はこのしきたりを訝しんでいた。

 

続く

次回の話/可愛くないアンサー

前回の話/監視に向くバンガロー

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。