キング アーサーのここだけの話
プラシーボって何や?
早く流れる雲に月が隠される。
それでも届く明るい月光に、下界は怪しさを増していく。
確かにシンさんの言う通りだ、警官に許されても民間人に許されていないことは多い。
しかもジュライホテルからシンさんが逃げ出したのも、小銭稼ぎを企む悪徳警官の罠にはめられないようにするためだった。
「なるほどね。警官が飲んでるからって、違法性はないってことにはならないってことだね」
「わかってんのはスピードポンチって名前と、飲むと少しハイになって、しばらく寝られへんことだけや」
「スピードの効能を知ってる?」
「だったら、眠くならないとか、ハイになるのはスピードのせいじゃなくって、プラシーボの可能性もある」
「プラシーボって何や?」はじめてシンさんから質問を出させることに成功した。
スピードポンチの効果があったのかもしれないが、それはすこぶる快感だった。
俺はこの快感になるべく長く浸かっていたかったので、こう応えた。
「プラシーボが何かって? それは簡単に教えられないね」
続く
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