LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
プラシーボって何や?

早く流れる雲に月が隠される。

それでも届く明るい月光に、下界は怪しさを増していく。

 

確かにシンさんの言う通りだ、警官に許されても民間人に許されていないことは多い。

しかもジュライホテルからシンさんが逃げ出したのも、小銭稼ぎを企む悪徳警官の罠にはめられないようにするためだった。

 

「なるほどね。警官が飲んでるからって、違法性はないってことにはならないってことだね」

「わかってんのはスピードポンチって名前と、飲むと少しハイになって、しばらく寝られへんことだけや」

「スピードの効能を知ってる?」

「だったら、眠くならないとか、ハイになるのはスピードのせいじゃなくって、プラシーボの可能性もある」

 

「プラシーボって何や?」はじめてシンさんから質問を出させることに成功した。

スピードポンチの効果があったのかもしれないが、それはすこぶる快感だった。

 

俺はこの快感になるべく長く浸かっていたかったので、こう応えた。

「プラシーボが何かって? それは簡単に教えられないね」

 

続く

次回の話/ストライクすぎる女の子

前回の話/虚栄心も羞恥心もなくなった俺

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。