LIFE

キング アーサーのここだけの話
月明かりが照らすビーチ

真夜中、トイレに起きた。

小さな寝息を立てるジュリーとケイトを起こさぬよう、俺は静かにバンガローを出た。

トイレとシャワーはレセプションとなる母屋との中間にひとつだけしかない。

 

満月から1日分欠けた月明かりが照らすビーチに目をやると、ナタリーはまだ波打ち際にいた。

モモまで水に浸かり、静かな波と戯れていた。

俺にはまったく気づいていないようだ。

用を済ませ、バンガローへ戻るとき、どれほどナタリーに声を掛けようか迷った。

でも気の利いたセリフも見つからず、俺は見ないふりをしてバンガローへ入っていった。

 

トイレに起きる前、ジュリーとケイトのあいだに寝いていた俺は、またそのポジションへと戻った。

ナタリーの様子から、シンさんはまだ海から帰ってきていないことが窺える。

俺は、シンさんに対する心配はなかったが、ナタリーが心配でなかなか寝付けず、横になりながらも何度も姿勢を変えた。

 

「安眠を妨害された!」

翌朝、ジュリーとケイトからの厳しい説教が待っていた。

 

続く

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。