キング アーサーのここだけの話
すべては自由になった
本来の旅程では、俺はバンコクにいなくてはならないはず。
夜には帰国の途に着く予定だった。
それなのにいま、南の島の寝返りも自由に打てないほど狭いバンガローにいる。
まあ寝返りについては昨夜、ジュリーとケイトからクレームが入ったので自粛しようと考えただけだ。
寝返りの自由はないが、日本に帰ることをやめたことですべては自由になった。
それ以外はジュリーとケイトも俺を自由にさせてくれている。
仰向けになり、額に汗をかき、肩で息をしているジュリー。
すぐ隣で、平気で横になっているケイトが目を閉じたまま言った。
「シンは帰ってきたの?」
「明け方、物音がしてたから、帰ってきたんだと思う」俺も肩で息をしながら、膝立ちのまま応えた。
続く
次回の話/それでも俺は自由だ
前回の話/月明かりが照らすビーチ
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