LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
キース・リチャーズはバカだ。

その日はシンさんも、混沌とした世界に入り浸ったはずだ。

シンさんにはナタリーひとりしかいなかったけど、上下が歪むほどの体験をしたことは、手に取るようにわかった。

 

「宇宙から、地球を俯瞰したよ」俺は言った。

久々に使った日本語だった。

「スキンカヤックに乗ってれば、そんなんようけある」そうシンさんは言ったが、続けて「せやけどスキンカヤックだけやと、たどり着けん世界もある」と笑った。

 

脳は確かにあの日のことも、あの快感も覚えてる。

でも同時に、あの日が特別だったこともよく理解している。

あの日のあの場所に戻れないことも知っているし、戻ろうとも、戻りたいとも思わない。

 

キース・リチャーズはバカだ。

血液を全部入れ替えただけで、またもう一度、同じ日が戻ってくると思っている。

 

続く

次回の話/完璧に再現できないあの日

前回の話/上下が歪むほどの体験

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。