キング アーサーのここだけの話
ケイトとジュリー
俺は蚊帳をめくりあげ、ドアの前に立ってひと呼吸置いた。
「ウェルカム!」
外の明るさよりもっと明るい声で俺は扉を開いた。
しかしドアの前にいたのは、ケイトでもジュリーでもなかった。
部屋を覗き込んだナタリーの大きな目には、いまにでも決壊しそうなほど涙が溜まっている。
「ケイトとジュリーは?」
「誰それ?」
俺は精一杯の強がりを言った。
強がりではなく、夢と思うように記憶をすり替えたために出た言葉なのかもしれない。
「ケイトとジュリーよ!」英会話の通じる2人を求め、頬に涙を伝わせたナタリーは強い声で聞いてきた。
その強さに押されて、俺は正気に戻れた。
「昨日、目を覚ましたときにはふたりともいなかった」
「いないってどういうこと?」
「俺にもわからない」
続く
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