LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
ケイトとジュリー

俺は蚊帳をめくりあげ、ドアの前に立ってひと呼吸置いた。

「ウェルカム!」

外の明るさよりもっと明るい声で俺は扉を開いた。

 

しかしドアの前にいたのは、ケイトでもジュリーでもなかった。

部屋を覗き込んだナタリーの大きな目には、いまにでも決壊しそうなほど涙が溜まっている。

「ケイトとジュリーは?」

「誰それ?」

俺は精一杯の強がりを言った。

強がりではなく、夢と思うように記憶をすり替えたために出た言葉なのかもしれない。

 

「ケイトとジュリーよ!」英会話の通じる2人を求め、頬に涙を伝わせたナタリーは強い声で聞いてきた。

その強さに押されて、俺は正気に戻れた。

「昨日、目を覚ましたときにはふたりともいなかった」

「いないってどういうこと?」

「俺にもわからない」

 

続く

次回の話/それ以上ないほどの汚い言葉

前回の話/日本人の気質

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

 

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。