LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
あれ、飲み薬とちゃうで

その薬が何であれ、シンさんは峠を越えたことは事実だ。

そして寝ずの看病を続けていたナタリーまで元気で陽気だ。

もう陽が落ちかけているというのに、ナタリーは海から離れようとしない。

 

その姿を優しく眺めるシンさんに、俺は静かに語りかけた。

「薬が効いたんだね」

「ああ」と応え、シンさんは振り返った。続けて「でもアーサー。おまえ、医大生やろ。あれ、飲み薬とちゃうで」と含み笑った。

「飲まずにどう使うの?」

「あれはチェンジや」

「チェンジって、何?」

「しかもモロッコ産の極上もんのチョコや」

 

続く

次回の話/手に余る致死量ほどのチョコ

前回の話/完全に生気を取り戻す

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。