キング アーサーのここだけの話
先の読めない俺
いつもならシンさんと一緒にいる時間帯。
ナタリーがひとりビーチで佇んでいる。
思いつめるように爪を噛み、海に向かってひっそりと。
俺の存在に気づいたナタリーはいつものように取り繕い、元気に駆け寄ってきた。
「アーサー! いたのなら声をかけてくれればいいのに!」
とはいうものの、とてもじゃないがさっきの空気感では声をかけていいものなのか悩む。
「シンさんは?」
どう返していいものなのかわからないが、とりあえず聞いてみた。
聞いてみたが、それが大失敗だとすぐに後悔がはじまった。
そもそもいつも一緒にいるはずのシンさんがいなくて、あんなに思い詰めてるんだから、何か問題があったに違いない。
俺の思慮深くないところというか、先を読まないところがモロに露呈した。
「ちょっと歩かない」とナタリーは言うと、俺の返事を待たず歩き出した。
続く
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