LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
人で混み合ったホーム

電話を終えたナタリーが、列車へと戻ってきているのが横目に見えていた。

俺がしたい話はちょっと複雑なので、それをとても英語で話せる自信がなかった。

だからナタリーが戻る前に、話し終えたかった。

しかもそれを英語で話せたとしても、ナタリーにはまったく伝わらない内容も含んでいた。

 

「バンコクに着いたら、俺はあのホテルへ向かうよ」

「ジュライか?」

シンさんは俺に目を向けず、人で混み合ったホームを眺めながら返した。

「違う。シンさんが賭けビリヤードをやっていたホテル」

「深刻に切り出すから、またジュライかと思った。そんでなんかの罪を着せられて捕まったら、助けに来て欲しいとか、そんな話かと思ったで」

 

続く

前回の話/たったそれだけのことで

「キング アーサーのここだけの話」は毎月3の倍数日に更新!

最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。