キング アーサーのここだけの話
変わらぬ景色が続く怠惰な世界
列車というのは不思議な空間だ。
客車にいれば、部屋にいるのと変わらず風景は変わらない。
窓の外は流れる写真のようでもある。
ときどき目をやれば、先ほどとはまったく変わっている。
埃っぽい町だと思っていたのに、次に窓へ目を向けると濃い緑のシャンングルへと変わっている。
また次に目を向ければ、緑は緑でも整然と並んだナツメヤシの畑。
ところどころにしか灯の灯らない暗闇の町だと思っていたのに、次に目を向けたときには金色に輝く穂をつけた水田。
車窓から見る景色が、驚くほどバラエティ豊かだった時代。
いまは世界中、街が似てきている。
部屋の外に飛び出ても、変わらぬ景色が続く怠惰な世界へと変貌しつつある。
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