LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
笑顔のステキな女の子

今夜、シンさんはバンガローに戻ってこない。

こんなチャンスは二度とないかも。

 

俺は話を誇張しながらも、完璧な男の中の男「小林朝太郎」像を作り上げ、ナタリーに自分をアピールした。

シンさんには港の数だけ彼女がいて、彼女を空港へ送って行ったその日に、別の女の子を口説いていたなんて話もした。

「シンならしそう。彼はイタリアンなんだわ」とナタリーは笑ってくれた。

完璧な男の中の男を演じているくせに、シンさんの女癖の悪さで会話も盛り上げようとするなんて、どこまでも卑怯な俺なんだ。

 

俺はもともと夜型人間なので、いつまでも起きていられる。

ましてやこんなに笑顔のステキな女の子が目の前にいて、話を聞いてくれる。

俺のつたない英語がどこまで通じているかわからないが、ナタリーは大笑いしてくれた。

 

夕日に染まったビーチは、やがて漆黒の海へと変わり、そして朝の光とともに極彩色を取り戻そうと色づきはじめた。

 

俺は一体どれだけ長い時間、中身のない会話を続けたのだろうか。

 

俺の覚悟はとっくに決まっていた。

彼女が好きだ。

ナタリーのすべてが好きでしょうがない。

 

でもそれをどうやって英語で伝える?

英語ではどうやって口説くのだろうか?

 

続く

次回の話/英語でなんて言う?

前回の話/寝ずに舟を漕ぐ

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。