キング アーサーのここだけの話
監視に向くバンガロー
いまにも潰れそうになった重い瞼を、どうにかこじ開けながらシンさんは話していたが、ついに限界がきたようだ。
「続きはあとでいくらでも聞かせてあげるから、いったん寝させてくれないか」
俺たちも一睡もせずに夜を明かしたと言いたかったが、だからといってまだ話が聞きたいから寝ないでくれと言えるほど俺は熱量を持っていなかったし、まだ眠くもなかった。
しかしナタリーは違ったようだ。
「じゃあ、私も寝ようかしら」
シンさんのことだ、<じゃあ、一緒に寝ようか>とシレッと言うに違いない。
そう感じたので俺はナタリーとシンさんの間に割って入って言った。
「シン、おやすみ。ナタリーをバンガローに送ってから、俺も寝るよ」
シンさんは俺の心理を見透かしているようで、目尻にシワを寄せた。
「グッドナイト、ナタリー。グッドナイト、アーサー」そう言葉を残すと、まったく振り返らずに自分のバンガローへと向かっていった。
俺はナタリーをバンガローに送り届けた後、しばらく自分のバンガローから2人のバンガローを見守っていた。
どちらかが、どちらかのバンガローへ侵入しに行くのではないか。
そう疑っていて、とても眠る気になれなかった。
ヤシの葉を編んだバンガローの壁は風通しがいいだけでなく、監視にも向いていた。
窓を開けずとも、2人のバンガローを眺めることができたし、薄っすらとだが部屋の中の人影を確認することができた。
間もなくするとシンさんのバンガローからはイビキが聞こえはじめ、俺にはそれが安全を伝えるリズムのようで心地よく、安心のあまり溶けるように寝てしまった。
続く
次回の話/今夜からしばらく寝ない
前回の話/おとぎ話のような展開
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