LIFE,  TRIP

キング アーサーのここだけの話
アスタ・ラ・ビスタ・ベイビー

海面が股下くらいまでくると、シンさんはやっとスキンカヤックに乗り込んだ。

海は急にドン深になっているのか、すぐ先では手漕ぎボートに乗った漁師が夕まずめに投網で魚を追っている。

「じゃあ、行ってくるよ」とシンさんは言った。

 

「アスタ・ラ・ビスタ・ベイビー!」フネの上から漁師が手を振りながら、シンさんに向かって大声で叫んだ。

よく見ると、漁師は昨日スピードポンチを売っていたあのちょび髭の男だった。

「何語だ? 何言ってんのかまったく通じないよ。ねえ」俺は4人に向かって言った

 

ジュリーとケイト、ナタリーとシンさんは顔を見合わせた。

「さっきのはスペイン語だけど、本当にわからないの?」ケイトが不思議そうに言った。

「スペイン語圏が広いからって、誰もがスペイン語を理解できると思ったら大間違いだ」と俺は応えた。

「そうじゃなくて・・・」ナタリーが言った。

「これも有名なセリフだ」シンさんが続いた。

「またイージーライダー?」俺は聞き返した。

 

続く

次回の話/地獄で会おうぜ

前回の話/どこまでも遠浅の海

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最初の話/はじまりのはじまり

キング・カズと生年月日が一緒の1967年2月26日生まれ。外人は<アサタロー>と発音しにくいらしいので、海外では<アーサー>と名乗っていたら、親しい外人仲間が<キング・アーサー>とニックネームをつけてくれた。「アサタロウ」と日本で名乗ると「アソウ・タロウ?」と聞き間違いされることが多々ある。彼が幹事長のときは俺に<カンジチョー>のあだ名がつき、総理大臣になると<ソーリ>と呼ばれるようになったが、彼の総理大臣辞任後も俺の格下げはなく、いまでも<ソーリ>のあだ名は定着している。本業はコーディネーター。