キング アーサーのここだけの話
ゴミを集める仕事
人をさんざん待たせておいて、それでも駅での停車時間は変わらない。
待ち人だった旅人は、我先にと列車に乗り込んでいく。
ここはラッシュ時の東京ではない。
停車時間は10分あるので慌てる必要もないだろう。
そう思ったのだが、「いい席がなくなる」と後ろから駆け寄ってきた旅人が俺の肩を押し、列車に詰め込んだ。
俺は言葉で反応できず、ただ後ろを振り返った。
よく日に焼けた肌、天然パーマらしい手入れは行き届いていないがよくまとまったクリクリの黒髪。
<アム・ヴィンセント>俺の目を上目遣い見て言った。
背は俺より低い。
<アーサー>名乗り返すと、ヴィンセントは遮るように言葉を続けた。
「ゴミを集めて駅員に渡しただろう。あれはNGだ」見られていたようだ。
「なぜNGなんだ」母国語が英語でない人の英語は非常に聞き取りやすい。
ラテン系の場合は特に。
「ゴミを集めるのを仕事にしている人がいる。その仕事を奪うことになる」
なんたる理屈だ。
続く
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