キング アーサーのここだけの話
公衆電話にいるナタリー
もうバンコクに到着してもいい時間だというのに、列車は途中の駅で止まっている。
駅名も読めなければ、ホームに流れるアナウンスも何を言っているのかさっぱりわからない。
「列車の故障かな。それとも事故でもあったかな。言葉がわかんないって、本当に困るよね」思いつくことを俺はそのまま口にした。
「まあ停車の原因はそんなとこね」と言ってナタリーは立ち上がった。
「言葉がわからないから面白い」シンさんはナタリーがいなくなった席に滑り込み、2席分確保するようにして横になった。
前にもシンさんから聞いたセリフだ。
言葉がわかるとつまらない。
わからないからこそ、相手の表情を読んだり、こっちの意思を一生懸命伝えようとしたりで、付き合いが濃厚になる。
言ってることや先がわかったら、やらなくていい。
わからなからこそ、行く意味、やる価値がある。
理解はできるが、全面的に同意できるかといえば、俺は以前よりシンさんよりの考え方になっているがいまだその途中だ。
シンさんから目をそらすようにホームを見ると、ナタリーは公衆電話にいた。
寄り道で帰国が遠のくことを連絡しているのだろう。
続く
前回の話/ここが岐路でいまが決断のとき
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